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「学びの銀河」プロジェクト
岩手県幼小中高大専ESDサミットの記録

会場の様子岩手県幼小中高大専ESDサミット


【講師】
上遠 恵子 氏
レイチェル・カーソン日本協会 理事長/翻訳家)
ヘイッキ マキパー 氏
フィンランドセンター 所長)
ほか

【日時】2008年7月5日(土)10:30〜16:30
【場所】岩手教育会館大ホール

 出席者は380人でした。
 閉会式において、「岩手県幼小中高大専ESDサミット宣言」を採択しました(下記)。

岩手県幼小中高大専ESDサミット宣言

  私たちは、いまや分かれ道にいる。……長いあいだ旅してきた道は、すばらしい高速道路で、すごいスピードに酔うことができるが、私たちはだまされているのだ。その行きつく先は、禍であり、破滅だ。もう一つの道は、あまり〈人も行かない〉が、この分かれ道を行くときこそ、私たちの住んでいるこの地球の安全を守れる、最後の唯一のチャンスがあるといえよう。――レイチェル・カーソン『沈黙の春』1962年(青樹簗一訳、新潮文庫)

  私たちが暮らす地球は、人間の活動を原因とする温暖化や環境破壊、さらに生物多様性の喪失などの危機に直面しています。また、グローバルな市場競争が世界の隅々まで浸透し、地域格差をはじめとする不平等やコミュニティーの崩壊がいたるところで広がっています。私たちは、いま持続不可能な破滅の道を猛スピードで走っているかのようです。

  子どもたちは、こうした現実を敏感に感じ取っています。私たちは、この事実を真剣に受けとめる必要があります。そして、子どもたちに「生きる力」と「未来への希望」を与えるために、持続可能なもう一つの道へ向かう取組の輪を広げていかねばなりません。日本の提案で国連が採択し、ユネスコが主導して、フィンランドをはじめ世界各地で取り組まれている国連「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development:ESD)の10年」は、まさにそうした取組の一つです。

  日本が定めた「国内実施計画」には、「私たち一人ひとりが、世界の人々や将来世代、また環境との関連性の中で生きていることを認識し、行動を変革することが必要であり、そのための教育がESDです。」と書かれています。それは、他者への思いやりや多様性の尊重、自然や生命への慈しみの心を持つ人材の育成と言い換えることもできます。

  岩手が生んだ宮澤賢治は、「世界がぜんたい幸福とならないうちは個人の幸福はありえない」と述べました。これは、まさにESDの価値観を言い表したものです。また、敵味方を問わず、獣や鳥、魚までも平等に極楽浄土へ導くこと目指した平泉文化をはじめ、岩手の歴史と文化、そして風土が育んできた価値観を土壌として語られた言葉とも言えます。

  私たちは、CO2の削減をはじめ持続可能な世界へ向けた協働の取組が焦点となるG8洞爺湖サミットを前に、幼稚園から小学校、中学校、高等学校、大学、専門学校が一堂に会して岩手の教育について共に語り合うために「岩手県幼小中高大専ESDサミット」に集まりました。

  私たちは、子どもたちに未来への希望を与え、持続可能な地域と世界を創り出していくために、教育に託されている使命を改めて確認しました。また、岩手が育んできた価値観が「共生の時代」を導く普遍性についても語り合いました。そして、園・学校が地域や保護者と協力しながら、校種、公私立を越えて連携していく必要性を確認しました。

  この認識に立って私たちは、このサミットを期に校種、公私立を越えた連携・協力のプラットホームとして「岩手県幼小中高大専ESD円卓会議」を設立し、持続可能なもう一つの道へ向けた対話と協働の輪を広げていくことを宣言します。

平成20年7月5日 岩手教育会館
岩手県幼小中高大専ESDサミット参加者一同

参加者の声

▼フィンランドの教育について、講義でも色々話を聞いていたのですが、初めて聞く内容が多かったのでとても勉強になりました。
▼保育園に勤めていますが、子ども達の感受性を育む、自然体験を大きなテーマにしています。ただ、その為には、職員自身が、感受性を磨くこと、自然に触れて実際に様々な体験を通して、感じたり経験したことを、子どもに伝えていくこと(共に体験)することが大切なのだと感じました。
▼IもIIも興味があったので参加しました。IIはられつで終わってしまって、とても残念でした。上遠さんのように、フィンランド教育にくわしい日本人が話す方がいいかもしれません。シンポジウムではそれぞれの学校の取りくみのすばらしさがわかりましたが、「地域」「家庭」の視点は、とても大事だと思いました。
▼教育関係者のみならず、各界、各業種にすそ野を広げた開催に進めていただきたい。今の日本にとって、ありとあらゆる問題を含め、一言で申し上げれば“人間教育”が最も大切であると思います。
▼自分がやっている環境教育に関わる活動が正しいかどうか、ひとりよがりのものではなかったかと思うところがあったが、たくさんの人のお話を聞くことにより、間違っていなかったとを確認でき、安心した。ESDに関わる共通理解を図るために、免許法の講習の必修に入れるといいのではと思いました。
▼土にふれることの大切さをもっと具体化させる教育実践が必要である。
▼ESDについて理解が深まったような……全く分からないような……対象があまりにも広範囲に渡っていて、どこから手をつけてよいのやら……そうかと思えば、今までやってきた○○教育との違いが分からないような……環境、社会、経済が柱なのだけれど、岩手は環境がメイン? それとも今回のサミットのテーマが環境? ESD初心者には、理解できないことがたくさんあった。
▼「幼小中高大専の連携」だけではなく、これからの岩手の子どもをどのように育てていくかという観点で、家庭、地域とどのようにとりこんで、共に連携をとっていくのか、そこまで考えることが出来るよう、このESDの(環境のみではない理念として)理念が広がることを望みます。
▼子どもたちにESDについての教育をしていくことはいいと思います。親にもESDの教育をし、親が子どもへESDのことを教えられるようになればもっとESDがひろまると思います。
▼とてもよい企画でした。もっとたくさんの参加があればよかったと思います。行政もまき込むことは無理なのでしょうか。幼稚園にできることを考えて取り組みたいと思いました。
▼幼稚園とどのような連携をしていこうとしているのかが分からなかった。
▼環境が意識され教育の場で取り上げるべきであると思う。そのことが着々と進められてきていることが理解できるが、系統的にシステム化するまでにはまだまだ時間を要する。このような取り組みが少しずつ浸透していくことを願う。
▼児童や生徒、学生がESDを理解というかよく分かっていないと思うので、先生方だけで話を進めても意味がないと思う。理解してもらえるように学ぶ機会が必要。講演Tの話をきいてみて、もの知り博士が多くはなったけど、感情的に考えないと知恵が少ないという指摘は考えさせられました。
▼とても大切な幼児期、保育士として自然の中で体験できるよう、感じられるようにしていこうと思いました。ありがとうございました。あと、保育園にもこのサミットの知らせがあるともっと良いと思いました。
▼大変勉強になりました。実践例は素晴らしかったです。学校関係者には、全く聞いたことがない人が多く、多忙化なのに、また新しいことやらされるのかという誤解をしている人が多いですが、少なくとも、今日参加された方々は理解を深めることができたと思います。平和教育やジェンダー、福祉、国際理解などを生徒に教えていくこと、全てが根底でつながっていて、これらのどれかに関心を示すと、どんどん広がっていって、これらを関連づけた形で、生徒に教えてきました。そういう意味でESDの考え方は、私の中の混とんとした思いをすっきりとさせてくれ、我が意を得たり!! の思いでした。また、多忙化や学力(この学力のとらえ方も偏狭)向上の中で、総合学習はおいやられ、このようなことに時間をかけ、丁ねいに教えたいと思っている職員は孤軍奮闘しているのが現状です。こういう現状において、今回、幼小中高大専のトップが集まってのESDサミット。トップに働きかけ、理解を得て、その理念を広げていこうという今回の取り組みに拍手を送りたい思いです。まだまだ課題は山積みのことと思いますが、今後も県教委等との連携で、この理念が浸透していくためにともにがんばりたいと思います。(久慈東の先生の提案、いいアイデアだと思いました)
▼校種、公私を越えて、教育機関の連携・交流の土台が出来た事が特に意義深いと感じます。
▼ESDは大人(教師)が子供(生徒)に、環境について考えさせるというイメージがありましたが、みなさんの実践例から実はその逆なのかもと思いました。大人の意識を変えるのは大変ですが、子供が学校や活動で学習したことを、今度は家族・家庭に伝えていく、ESDはその点でも有効かもしれないと思いました。実践校の生徒さんたちがうらやましいです。私も子供のうちに、もっとこういった体験をしたいと思いました。これからもっとESDが広がって、全ての子供がこんな学習ができますように……
▼フィンランドの教育には大変感動しております。教育研修に必ず取り入れるべき。また、採用試験についてもこの内容を盛り込み、一人でも多くの教員がこの分野についての力をつけるよう進めるべきである。要は生徒の心に灯をつける教育の実践者を育てることが急務である。そして、地域でも世界でも自分の役に立ちたいという志をもった子どもの進路指導も含めてしっかり育てるべきである。
▼授業、部活動、行事等で時間のゆとりがないのが現場の実態です。大切な事ですので、先生方、生徒達に伝え、少しでも実践していきたいと思います。
▼参加して大変勉強になりました。今後、家庭、職場でどのように広げていくか考えていきます。実践できること勧めていきたいです。
▼現在の地域のつながりが作りづらい都市化の流れの中で、個人がつながりを求めて、活動できる範囲は限られている。やはりつながりを作り出さざるを得ない、そして環境に配慮せざるをえない社会システムの構築を行政プロジェクトとして政府や県に働きかけていくことが必要だと思った。
▼「持続可能な社会を形成していく人材の育成」などと、聞いたことはあるのですが、意味通りな言葉でよく分かるのですが、どこかカタイと感じています。ESDとなると、何のこと? となりますし、言いたいことが伝わらない。幼稚園や小学校低学年生活科でのキーワードは「くり返す」(くり返してつながっているってことかな)です。季節もくり返し、音楽のリズムもくり返す、植物の成長もくり返す。元に戻る。そのモトが大事なのですが……今は忘れられていますね。
▼もう5年たったとか? 10年になったら止めるのか? 授業時間も減ってきているのに、目標をはずされたときゆとり教育と同じように又、変更になるのですか? せっかくの方法も文科省の方針でくるくる変わるような教え方にならないように、それこそ持続可能な教育目標でありつづけて欲しい。すばらしい学習だと思うので。
▼2014年で終了になるようなとりくみの印象がありましたが、まさに、スタートですね。
▼・「学校教育」の面にシフトし過ぎていないか? (家庭教育、地域社会教育、自然学校での教育も含めてほしい)
 ・ESDの中の「環境教育」に特化しすぎていないか? (人種、ジェンダーetc テーマは多様)
 ・岩手・宮城大地震被災者への一言もあった方が良い。
▼教育委員会・県・市・町・村議会関係者が殆どいない。及川先生が語った、ボトムアップ・トップダウンを背後から押すのが議員の仕事。議員が参加しもっと勉強すべき。
▼様々な方の御意見に接して勉強になりました。
▼これはあくまでも「スタート」なので、これからさらに、いろいろな取組や、連携を深めて、より“おもしろい”取組ができるとよいです!
▼持続可能な社会を築くことは環境教育の目標でもあると思うが、ESDとの違いがわからない。
▼テーマが広すぎ……どう手を出したらよいかわからない。システム化(事例の蓄積や系統化、地域や個別の活動がどうESDに関わるのかなど)が、必要だと考える。
▼ESDの理念には基本的に賛同。岩手でこのような取り組みがされていることを嬉しく思った。懸念を1つ。資本主義社会の中で、この考えがどの程度浸透するのか、どれくらい具体的な活動に結びつくのか、疑問である。経済的に豊かな人が「勝ち組」と言われ、格差が広がるこの世の中で、「足るを知る」ことを身につけさせるのは並大抵のことではないと思う。地方レベルで取り組んで行くしかないのかもしれないが、ある程度国、政府が方針を出す必要もあるのでは? そのための働きかけも必要なのでは?
▼「虎十公園林」は人間教育の原点、哲学が書かれていることを記念講演Iを拝聴して感じました。
▼子育てに、社会的にも親としてもESDは大切な事とかんじており、今回も実感しました。関係者の方々に感謝申し上げます。

© 岩手大学ESD推進委員会